1. はじめに:循環式ATF交換の必要性
BMW 6シリーズ 640i グランクーペ 【GA8HP45Z】 のトランスミッションは、スムーズな走行に重要な役割を果たします。 しかし、ATF(Automatic Transmission Fluid) は経年劣化し、性能低下、変速ショック、燃費悪化、ひいてはトランスミッション故障につながる可能性があります。
特に、記録簿に交換歴がない場合、予防保全としてのATF交換が強く推奨されます。 従来のドレン&フィル方式では、トランスミッション内部に滞留するATFを完全に交換することが困難なため、本事例ではより確実な全量交換を目指し、LIQUI MOLY GearTronicⅢを使用した循環式圧送交換を実施しました。
2. LIQUI MOLY社製:高性能ATFとGearTronicⅢ:循環交換システム
交換に使用するフルードは、ドイツLIQUI MOLY社製の高性能ATFです。 優れた熱安定性と酸化安定性を持ち、トランスミッションの摩耗を抑制し、長寿命化に貢献します。 従来のATFチェンジャーでは、完全に古いATFを排出することが難しく、新油と旧油が混ざり合うため交換効果が限定的でした。 しかし、GearTronicⅢシステムは、ATFを循環させながら新油と置換するため、ほぼ全量交換を実現します。 これにより、交換効果を最大化し、トランスミッションの性能を最適に保ちます。
GearTronicⅢ:交換メリット
- ほぼ全量交換: 従来のドレン&フィル方式に比べて、格段に多くのATFを交換できます。 トルクコンバータ内部のATFも交換できることが大きなメリットです。
- シフトフィーリングの向上: スムーズな変速とレスポンスの向上に貢献します。
- 燃料費の増加: 摩擦抵抗の低減により、燃費改善に繋がります。
- トランスミッション保護: スラッジやデポジットの発生を抑制し、トランスミッションの寿命を延ばします。
3. GearTronicⅢを使用したATF循環交換手順:詳細な作業工程
1. 事前準備:効率性と安全性を最優先
- 車両情報確認: VINコードから正確なトランスミッション型式、ATF推奨容量、粘度、推奨交換サイクルなどを確認します。 BMWのTIS (Technical Information System) などの整備情報データベースを活用します。
- 機器の準備: リキモリ GearTronicⅢ、適切なアダプターキット(車両と機械の互換性を確認)、新品ATF(リキモリ TOPTEC 1800など推奨容量+α)、廃油処理システム、トルクレンチ、レベルゲージ、診断機(ISTA/Dなど)を用意します。 アダプターキットの適合確認は必須です。
- 作業環境: 安全で、適切な照明と換気のあるワークショップを選択。 ATFの漏洩対策として、オイル受けトレーを準備します。
- 消耗品: 新品のOリング、ガスケットなどを準備し、交換が必要な場合は交換します。
2. 車両準備:正確な作業のための準備
- 車両診断: 診断機を用いて、トランスミッションにエラーコードがないか、既存のオイルの状態(温度、レベル)を確認します。 既存のオイルサンプルを採取し、状態を記録します。
- オイルパンアクセス: オイルパンへのアクセスを容易にするために、必要な部品(アンダーカバーなど)を取り外します。
- オイル温度調整: エンジンを始動させ、ATFオイルを40~50℃に調整します。診断機で温度をモニタリングします。
3. 機械接続:迅速かつ正確な接続
- 接続ポイント確認: 車両の整備マニュアルを参考に、ATFクーラーラインの最適な接続ポイントを特定します。 低圧側ラインへの接続が一般的です。
- 接続作業: 適切なアダプターを使用し、機械をATFラインに確実に接続します。 すべての接続部は、規定トルクで確実に締め付け、漏れがないことを確認します。
4. ATF交換手順:効率的な循環とモニタリング
- 機械起動と循環開始: リキモリ GearTronicⅢを起動し、循環を開始します。 診断機でATF温度、圧力、流量をリアルタイムでモニタリングします。
- フラッシング(必要に応じて): オイルの状態によっては、専用のフラッシング剤を使用します。 メーカーの推奨手順に従って行います。
- 新しいオイル注入: 古いATFの排出が確認できたら、新しいATFを注入します。 複数回に分けて注入し、レベルゲージでオイルレベルを確認します。
- 循環継続: 目標とするオイル量とオイル温度に達するまで、循環を継続します。 診断機を使用して、トランスミッションの作動状態をモニタリングします。
5. 完了と後処理:正確な作業完了と廃棄処理
- 機械の切断: 循環が完了したら、機械を車両から切断します。 接続部からのATF漏れがないことを確認します。
- オイルレベル調整: 必要に応じて、ATFオイルを補充し、レベルゲージでオイルレベルを確認します。
- 診断機による最終確認: エラーコードがないことを確認します。
- 作業記録: リキモリ GearTronicⅢ発行の作業レポートをお渡しします。
6. トラブルシューティング:迅速な対応
- 血行不良: フィルター詰まり、ホースの閉塞、ポンプの故障などを疑います。 原因を特定し、迅速に対処します。
- オイル漏れ: 接続部の緩み、ホースの破損などを疑います。 修理または交換を行います。
- 診断機エラー: エラーコードが表示された場合は、その意味を正確に解釈し、適切な処置を取ります。
この手順書は、プロのメカニックの知識と経験に基づいて作成されています。 常に安全を最優先し、適切な手順と工具を使用して作業を行ってください。 不明な点があれば、メーカーの技術資料などを参照することをお勧めします。
4. 交換後のインプレッション:走行フィーリングの変化
お客様からは、「ATF交換後、帰路の関越道で気持ち良く走ることができました。踏んだ時のトルク感増とパドル操作時の反応が素晴らしかったです」というご感想をいただきました。 これは、劣化ATFの除去と新油への完全置換による、トランスミッション油圧制御の最適化がもたらした効果と考えられます。 特に、負荷のかかる上り坂でのスムーズな加速と確実なシフトチェンジは、交換効果を如実に示しています。
5. まとめ:予防保全によるトランスミッションの長期的な健康維持
LIQUI MOLY GearTronicⅢと循環式交換システムによるATF交換は、従来の方法と比較して、トランスミッションの性能を効果的に向上させ、寿命を延ばす上で非常に有効な手段です。 初期費用は高額ですが、高額なトランスミッション修理費用を回避する観点からも、費用対効果は高いと言えるでしょう。
6. 注意事項
ATF交換は専門知識と技術を必要とする作業です。 ATF交換は、専門知識と特殊な工具を必要とする高度な整備です。 熟練のメカニックによる適切な作業で、車両の性能を最大限に引き出し、トランスミッションの寿命を長く保つことができます。 信頼できる専門業者にご依頼いただくことで、安心安全なATF交換を実現できます。
7. まとめ
【トランスミッションフルードの交換時期】
ATFの交換時期は、車種や使用状況によって異なりますが、一般的には3~4年ごとまたは走行距離4万~6万kmごとが目安となります。ハッカイオートでは3万キロ前後くらいの間での交換を推奨しています。
ATFは、使用に伴い酸化や摩耗が進み、スラッジ(汚れ)が発生します。 これらの劣化は、変速ショック、燃費の悪化、そして最悪の場合、トランスミッションの故障につながる可能性があります。 トランスミッションの故障は、高額な修理費用を招くため、定期的なATF交換による予防整備は非常に重要です。
【GearTronicⅢ:作業内容と費用】
ハッカイオートでは、高度な技術と専門知識を活かし、LIQUI MOLY GearTronicⅢを用いた徹底的なATF循環交換を行っています。 作業内容は、以下の通りです。
- 車両診断とロードテスト
- GearTronicⅢ機械接続
- ATF循環交換(フラッシング作業を含む場合あり)
- オイルパン脱着・洗浄(必要に応じてフィルターを交換します)
- 新オイル注入(各メーカーに適合したフルードを使用します)
- オイルレベル調整(油面調整)※夏季はオイル温度が下がり難いです。
- 診断機による学習のリセット、ロードテストの最終確認を行います
- 廃油処理(使用したフルードを適切に廃棄します)
作業時間は、車種によって異なります。 正確な費用と作業時間につきましては、お見積もりさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
【魚沼市で信頼されるドイツ車専門整備工場】
新潟県魚沼市のハッカイオートは、ドイツ車に特化した専門知識と技術を持つ整備工場です。 長年の経験と高い技術力により、車検・点検、一般整備はもちろん、複雑な故障診断やエンジンオーバーホールといった重整備にも対応可能です。 特に、輸入車特有のトラブルや、大手整備チェーンでは対応困難なケースにも、確実な対応と丁寧な説明で、お客様の安心と信頼を得ています。
ATF交換はもちろん、車検、点検、一般整備から重整備まで、幅広く対応しております。 魚沼地域で信頼できる輸入車整備工場をお探しなら、ハッカイオートへお気軽にお問い合わせください。
公式ホームページ:https://www.hakkaiauto.jp
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本ブログ記事は、情報提供を目的としており、整備作業の手順を保証するものではありません。 記載されている内容は簡略化されており、実際の整備作業には専門的な知識と技術が必要です。
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